山形県東部の村山地方から最上地方にかけて江戸時代から残る風習がある。結婚せずに亡くなった子供のために親などが、子供の結婚式を絵馬にして奉納する風習「ムカサリ絵馬」だ。
下記の産経新聞さんの記事より引用した。
参考記事
むかさり絵馬を奉納する観音様のひとつが故郷村山市にある。小松沢観音へは大昔、何十年かに一度という火渡りの行事を見に行った記憶がうっすらあるくらい。当時はむかさり絵馬の知識もないし幼過ぎて何もわからなかったろう。
楯岡の市街地から離れた山の中にある。
車がすれ違うのがやっとな山道。そんなに交通量があるわけではないが、実家の軽自動車で良かった。(幸いにもこの日は全然すれ違わなかった。)
途中ところどろこに石碑が立っている。「貞順碑」と読めるが、わからないなぁ。

堀井稲荷大明神。

ちゃんと神社らしく拝殿と奥の院があるように見える。

次は「利教塚」。またまたわからない石碑だ。こうした部外者へのわからなさは、家族など個人の名前をつけてお稲荷さんを祀る関西のお塚信仰を思い起こさせる。

増森稲荷。先程の堀井稲荷は由来不明だったがこちらは同名のお稲荷さんが埼玉にあるようだ。でも関連があるかはわからない。

黒光りの石柱が豪華に思える水神様。

カーブの向こうに小松沢観音の鳥居と石段の参道が見える。観音様だけど鳥居とはこれ如何に。さすが山形はこういうの多い、多すぎる。
車なのでそのまま通りすぎ車道を観音様まで上がる。

駐車場に車を停め観音様へ向かって少し下る。

茅葺にトタンをかぶせた屋根のこちらの建物は寺務所か庫裏か。名前を見たはずなのに忘れてしまった。確か別当のお寺に関連していたような・・・やっぱり記憶は薄れる、鉄は熱いうちに打つべき。


本堂が見えてきた。手前は仁王門。

仁王門に奉納されている大わらじ。村山市で大わらじといえば10年に一度浅草の浅草寺に奉納されている大わらじ。あの大わらじ村山市の楯岡荒町の有志の方々が製作、奉納したもの。山形県の公式観光サイトによればこの大わらじはその兄弟だそう。

仁王門なので仁王様。普通サイズのわらじたちもいくつか奉納されていた。

古刹の仁王門だが難と素朴な板壁の姿。そして手押し車が立て掛けてあるのも微笑ましい。地元ではイヂリンシャ(一輪車)と呼んでいたな。

先ほど通過してきた表参道の石段。車道が見える。

深い木立の中に、小松沢観音堂。凛とした緑の光の中になんとも幽玄な佇まい。

まずこの観音堂は最上三十三観音の一、第二十番札所である。最上三十三観音は祖母がバスツアーで結願させていたことを思い出す。ご本尊は聖観音菩薩で、御詠歌は『ちちははの はなとそだてし こまつざは はるをまちえて みどりたつなり』。行基さんが彫った仏像三体が安置されたのが始まりと伝わる。
手水舎と後生車。

境内にお堂がたくさん建っているというわけでもない。全体の雰囲気が実に素朴。
厄除大師堂。

弁天堂。池には菖蒲が伸びていた。

お参りをし、お堂の中を窺う。薄暗いお堂に豪華な装飾品はないが、奉納品でとても賑やか。


「むかさり」は村山地方で「結婚式」のこと。語源は今検索すると諸説あるようだ。一応ネイティブである自分にはどれもあまりしっくり来ないが、「迎え去る」説が辛うじて頷けるかな・・・昔「婿漁り」説も見た記憶があるが今はもう見えないな。
その「むかさり」の情景を描いた「むかさり絵馬」が小松沢観音をはじめとした最上三十三観音のいくつかの観音堂に多数奉納されている。

むかさり絵馬は幼くして、また若くして亡くなった子供が彼岸では結婚できますように、幸せに暮らしてくれますようにという親御さんの願いが込められた大変切ない風習だ。

江戸時代から続く風習だそうだが、昭和初期の日付をよく見かけた印象。山形に帰った時たまたまこのむかさり絵馬の絵師さんを取材したローカルニュースを見掛けた。平成(番組を見た当時)の世にもなおむかさり絵馬は新たに奉納されているとのことだった。
なお76枚は市の有形文化財に指定されているそうだ。(と文化遺産オンラインに書いてある。)

参考記事
絵のタッチは素朴だが、それが却ってこの村山地方というお土地柄を表しているようで胸を打たれる。この都会から遠い山がちな地方で、これらの絵が名のある浮世絵師や名のある日本画家の絵で豪華な額縁にあるのではきっと違和感があったろうし、所狭しと並べられている様子も好ましい。(古いものをすぐに外して例えばお炊き上げなどしてしまうというわけではないんだな、という点で。)






静かな祈りの場を辞して山道を戻る。
「遺愛碑」、また謎の石碑だ。隣は山形県頻出必修科目の象頭山。

不動堂。地元では「おふどさま」と呼ばれる不動尊。

はっきりと彫られている不動明王像。お不動さんに赤い前掛けを奉納してしまう素朴さがいじらしくてぐっとくる。

首無し地蔵もこの辺りでは多い。

先ほど通過した表参道。村山地区は石鳥居文化圏でもある。

石鳥居に言及したところで。
小松沢観音の細い山道を脱出し楯岡の市街地に戻る手前、父母法恩寺、通称雪の観音という本名も通称も美しいお寺の隣にある、ずんぐりむっくりの謎鳥居。一見して謂れかいわくがありそうな姿をしている。
鎌倉~室町期建立と推定されているが、何に向けられた鳥居かは不明とのこと。小松沢観音説、甑岳の山岳信仰説があるようだ。方角的にはどちらも可能性ありそう。

(2022.05.21)
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